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有期労働契約の無期労働契約への転換

労働条件の不安定な非正規労働者の雇用の安定が期待されます

有期労働契約の無期労働契約への転換

1.初めに

平成28年3月社労士稲門会
 勉強会後の懇親会

 近年、パート、アルバイト、派遣労働者等の非正規雇用労働者の絶対数及び労働者全体に占める割合共に増加しております。厚生労働省が平成27年11月4日に発表した、「2014年就業形態調査」によると、男女合計で40.5%(前回調査より1.8%上昇)、女性だけでは68%にも達しているそうです。嘗ての日本的企業経営の特徴であり、その強さの源泉でもあった「年功序列制」と「終身雇用制」は最早、一部の限られた企業にしか存在しないと言えます。
 このように非正規雇用形態の労働者が増加した背景には、経済のグローバル化による国際競争の激化と労働者側のニーズや労働に対する意識の変化もあげられると思います。いずれにしてもこのような傾向は暫くの間、増加する事はあっても減少することは無いように思われます。詳細は後述させていただきます。
 以上のような労働環境の変化を受けて、「労働契約法の一部を改正する法律」が平成24年8
月10日に交付され、下記Ⅱ「雇止めの法理の法定化(労働契約法第19条)は同日に施行され、その他は平成25年4月1日より施行されております。今回の改正の中心となる論点は次の3点です。

今回の改正の中心となる3つの論点
Ⅰ有期労働契約の無期労働契約への転換(労働契約法第18条)
     有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えた時は、労働者の申込により期間の
    定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールです。

Ⅱ「雇止めの法理」の法定化(同法第19条)
     最高裁の判例で確立した「雇止めの法理」が、そのままの内容で法律(本条)に法定
    
化されました。一定の場合には、使用者による雇止めが認められない事となるルー
    ルです。

Ⅲ不合理な労働条件の禁止(同法第20条)
    有期契約労働者と無期契約労働者間で、期間の定めがある事による不合理な労働条件
 の相違を設ける事を禁止するルールです。尚、当該第20条は令和2年4月施行改正
で、 
 短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第8条に統合されて
 おります。

  取り敢えず、労働契約法第18条に設けられた有期労働契約の無期労働契約への転規定に
 ついて詳述させて頂きます。この様な規定が、労働者の地位を不当に脅かしかねない不合理
 な有期労働契約から労働者の地位を守るための第一歩となる事を期待したいと思います。し
 かる後に、非正規労働者数が増加してきた時代的な背景と、今後の方向性について触れてみ
 たいと思います。

2.労働契約法に無期労働契約への転換規定が設けられた

 

 

1.無期労働契約への転換(法第18条1項)
 …平成25年4月1日施行改正
有期労働契約から無期契約労働への転換の申込

  
・労働者の平成25年4月1日以後開始した有期労働契約の通算契約期間が5年を超える場合、そ
 の(5年を超えた直後の、又は5年を超える事となる)契約期間の初日から末日までの間に、
 無期転換の申し込み行う事が出来る事となりました。当該申し込みは労働者の権利(無期転
 換申込権)であり、申し込むか否かは労働者の自由です。平成25年4月1日前の日が契約

 期間の初日となる有期労働契約期間は、通算契約期間の対象とはなりません

・後述の「3.無期労働契約への契約転換図解」を見ていただければご理解いただけると思い
 ますが、平成25年4月1日以降1年単位の有期労働契約が5回更新され6回目の有期労働契約期
 間内に、労働者が無期転換申込権を行使すれば、最短で平成31年4月1日以降は無期労働契約
 に移行
する事となります。尚、労働者が無期転換申込権を行使すれば、使用者が当該権利の
 行使に同意するか否かに係らず
新たな無期労働契約が成立します
 

・通算5年を超えて契約を更新した労働者が、その契約期間中に無期転換の申し込みをしなかっ
 た場合は、次の契約更新以降でも無期転換の申し込みが出来ます。即ち、有期労働契約期間
 が通算5年を超えた後であれば、何時でも無期転換の申込が可能です

 

・当該無期転換申込権は、平成25年4月1日以降の期間について「2以上の有期労働契約」の通
 算契約期間が5年を超える場合、すなわち、更新が1回以上行われ、かつ、通算契約期間が5
 年を超えている場合
に生じます。従って、労基法第14条第1項に規定する、一定の事業の終

 了まで必要な期間を定める労働契約期間が5年を超える場合や、1度も労働契約が更新されて
 いない場合は、当該第18条第1項の要件を満たすものとはなりません

・当該申し込みは口頭でも良いが、後日の争いを避けるためにも、労働者は当該申し込みを
(無期労働契約転換申込書等の)書面で行うと共に、申込を受けた使用者はその事実を証する
 為に、回答を書面の形(無期労働契約転換申込受理通知書等)で労働者に交付する事が望ま
 しいとされます(厚生労働省の様式雛型有)

詳しくはこちらをクリック

(転換対象となる労働者の範囲)​

有期契約労働者とは、1年や6か月単位の有期労働契約を締結、又は更新している方であり
 契約社員、パートタイマー、アルバイト等の名称の如何に拘わらず、
契約期間に定めのあ
 る方は
、すべて無期転換ルール」の対象となります。

 

・当該無期労働契約への転換規定は、派遣労働者にも適用されます。派遣法第30条に定める

 「特定有期雇用派遣労働者」に対する無期転換推進措置義務との整合性からも明らかです。
 派遣労働者の無期労働契約への転換の申入れは、派遣元の会社に申し入れる事となります


無期労働契約申込の効力

        
・労働者からの無期労働契約への転換の申し込みが為されると、使用者が当該申し込みを承諾
 したものとみなされ、無期労働契約の申し込みをした時点で無期労働契約が成立します。但
 し、無期労働契約に転換されるのは申込時の有期労働契約が終了する翌日からです
 
・労働者からの無期労働契約への転換の申出がなされた時点で、使用者が労働者を解雇した場
 合、当該有期労働契約期間のみならず、転換後の無期労働契約期間についても解雇したもの
 とされます。労働契約法第16条の規定(「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念
 上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」)通り、
 使用者は止むを得ない事由がある場合で無ければ労働者を解雇できません。労働基準法第20
 条の解雇予告等の規定も適用されます。従って、この場合には既に労働者からの無期転換申
 込権行使後のため有期労働契約の雇止めではなく、解雇に関する規定が類推適用されます
 

・無期労働契約に転換した後における解雇については、個々の事情により判断されますが、一
 般の労働者と労働条件や雇用管理が大きく異なる労働者については、こうした限定等の事情
 のない正社員と当然に同列に扱われる事とはなりません(H24年8月10日基発0810第2号)

 

無期労働契約への転換後の労働条件        

・無期労働契約への転換後の労働条件は別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と同一と
 なります。但し、別段の定めをなすことにより(通常の労働者同様の労働条件への)変更が
 可能です
 

・無期転換への申し込みをしない事を、有期労働契約の更新の条件とする事は出来ません

2.労働契約法のその他の規定(法18条~20条以外)

労働契約法(平成19年12月成立、同20年3月施行)・・・民法の特別法のために民法に優先し
て適用されるが、取締法ではない為労基法の様な罰則規定は無い

目的(第1条)
         
労働契約法は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は
変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定める事により、合理的な
労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにする事を通じて、労働者の保護を図りつつ、
個別の労働関係の安定に資することを目的とする。(労働者として使用される)家事使用人にも
適用される
※この法律は、国家公務員及び地方公務員については適用しない。又、使用者が同居親族のみ
を使用する場合にも適用しない

労働者及び使用者(第2条)
        
労働者・・・使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者     
使用者・・・使用する労働者に対して賃金を支払う者。即ち、事業主に該当    
労基法第9~10条         
労働者・・・職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下事業)に使用される者で、賃金を支
払われる者
  
使用者・・・事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事
業主の為に行為する全ての者

労働契約の原則(第3条)
        
①労使対等の原則・・・労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づき締
 結又は変更すべきものとする
②均衡考慮の原則・・・労働契約は、労働者及び使用者が就業の実態に応じて、均衡を考慮し
 つつ締結又は変更すべきものとする
 
③仕事と生活の調和への配慮の原則・・・労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和
 にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする
④信義誠実の原則・・・労働者及び使用者は、労働契約を遵守すると共に、信義に従い誠実に
 権利を行使し、義務を履行しなけ ればならない(民法第1条第2項)
⑤権利濫用の禁止の原則・・・労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当り、そ
 れを濫用することがあってはならない(民法第1条第3項)
       

労働契約内容の理解の促進(法4条)
       
①使用者は労働者に提示する労働条件及び労働契約内容について、労働者の理解を深めるよう
 にするものとする
 
②労働者及び使用者は、労働契約内容について、出来る限り書面により確認する事(書面の交付
 は義務付けていない)  
 

使用者による、労働者の生命、身体等の安全の確保の為の「必要な配慮」(法第5条)
   
使用者は労働契約に基づいてその本来の責務として賃金支払義務を負う他、労働契約に特段の
根拠がなくとも、労働契約上の付随的義務として当然に安全配慮義務を負うと規定されている

労働契約の成立(法第6条)
        
労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことに
ついて、労働者及び使用者が合意することによって成立する
 
合理的な就業規則の定めは労働者への労働条件となる(法第7条)     
①労働者と使用者の労働契約締結時、合理的な労働条件が定められた就業規則が存在し、かつ、
 当該内容が労働者に周知されている場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労
 働条件によるものとする
②労働契約で、労働者と使用者が就業規則と異なる内容の労働条件(=就業規則を上回る条件
 で定められた労働条件)で合意していた部分については、第12条(就業規則を下回る条件で
 定められた労働条件の、就業規則への(部分無効)自動引上げ)に該当する場合を除き、当
 該労働条件は労働契約の定めによる
 
労働契約内容の変更(第8~10条)       
①労使は、合意により労働契約内容である労働条件を変更できる(8条)    
②使用者は労働者の合意を得る事無く就業規則を変更することにより、労働者の不利益となる
 ような労働契約内容である労働条件を変更する事は出来ない。但し、次の場合はこの限りで
 はない(9条)
③労働条件を変更するには、変更内容が以下の事情に照らして合理的である事と、変更後の就
 業規則を労働者に周知させる事が必要(10条)
(就業規則の変更が合理的なものであるか否かの判断の要件の例示)    
・労働条件の変更により労働者が受ける不利益の程度      
・労働条件の変更の必要性        
・変更後の就業規則の内容の相当性       
・労働組合等(職場の過半数意見代表者を含む)との交渉の状況、その他の就業規則の変更に係
 る事情
  

就業規則違反の労働契約(第12~13条)
       
①就業規則未達の労働条件を定める労働契約は、その部分につき無効とし、就業規則に定める
 基準による・・・部分無効自動引上げ(法12条)
②法令及び労働協約に反する就業規則に準拠して締結された労働契約は、当該部分につき労働
 者に不適用(法13条)=  当該部分については原則的に、法令及び労働協約の定めによる
 
出向(第14条)         
使用者が労働者に出向を命じる場合、その必要性、その選定事情に照らし、その権利を濫用し
たものと認められる場合、当該命令は無効とする。当該出向について、当該労働者の個別の同
意まで得る必要はないとされる
   
懲戒(第15条)         
使用者が労働者を懲戒処分にした場合、その内容に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当と認められない場合、その権利を濫用したものとして無効とする
 
解雇(第16条)         

客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、その権利を濫用したも
のとして無効とする。かつて労基法第18条の2に規定されていたが、当該労働契約法第16条に
統・配合された

 

期間の定めのある労働契約(第17条)       
①使用者は、止むを得ない事由がある場合を除き、期間の定めのある労働契約の途中において
 労働者を解雇する事は出来ない(法17条1項)
※民法第628条では、「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、止むをえない事由がある
 時は、各当事者は直ちに契約を解除する事が出来る」と規定しているが、労働契約法では、使
 用者は止むを得ない事由が無ければ労働者を解雇できない旨の明文の規定を設けた

②使用者は、期間の定めのある労働契約を必要以上に短く定め、その労働契約を反復して更新
 する事のないよう配慮を要す。即ち、一定の期間内に、より短期の有期労働契約を反復更新
 するのではなく、その一定期間を契約期間とする有期労働契約を締結するよう配慮する事を
 求めている(法17条2項)
 

 (注)第18条~20条については、別項を設けて詳解しております

 

船員に関する一部の規定の除外(第21条)      
船員については第12条及び第17条の規定は適用されません。その他の規定は適用されます  
          
適用除外(第22条)        
①当該法律は、国家公務員及び地方公務員には適用されません(同条第1項)   
②当該法律は、使用者が同居親族のみを使用する場合の労働契約については適用されません
(同上第2項)

3.無期労働契約への契約転換図解(法18条1項) 

()直前の有期労働契約期間が10か月超~1年未満のクーリング期間は、有期労働契約期間
  が1年以上と同じ6か月以上となります 

通算契約期間のカウント方法
 ・
「同一の事業主」毎に計算します。事業所が代わっても同一事業主であれば通算可能
   です
 ・労働契約の存続期間で計算します。育児休業や介護休業期間も含みます
 ・労働契約期間の計算は、暦に従い年、月、日の単位で計算します。複数の契約期間が
  ある場合は、全契約期間の日数を加算して、30日をもって1か月に換算します

4.労働契約法第18条の特例

1.<特例1…大学等の研究機関に勤務する者に対する特例>
1)平成26年4月1日施行で、労働契約法第18条の特例として、「大学等及び研究開発法人の研
 究者、教員等の任期に関する法律の一部を改正する法律」(平成25年法律第99号)が交付され、
 大学等及び研究開発法人の研究者、教員等については、無期転換申込権発生までの期間が前
 述の原則5年から10年とする特例が設けられました。
 
2)即ち、通常は、契約期間が1年の有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、6年
 目に無期転換の申込を行えば、7年目から無期労働契約に転換されるが、下記に定める特例対
 象者については、
無期転換申込権10年経過後に生じる事となります。
 

(補足)

従来、大学等の研究機関における研究員の雇用契約は1年間の短期契約の連続が主流であった
そうです。これが平成25年4月施行で、無期転換への移行制度が出来たため大学側は、雇用期

間が5年経過前に研究者の雇用契約を打ち切る事例が多発したそうです。これに対して研究機
関の労組からは多くの反発があり混乱が生じていました。そこで、研究機関等の研究者の雇用
の確保をはかる為に、折衷案として期転換申込権発生までの期間を5年ではなく10年とする
当該特例
を設けたそうです。如何に労働者又は労組と研究機関等との妥協の産物とは言いなが
ら、労働契約法第18条に定める通算労働契約期間5年経過の労働者に対する無期転換申込権を
10年経過の労働者に対して与えると言うのは、改正の方向が逆だったのではとの意見も聞こえ

てまいります。

 

3)特例対象者は、「研究開発力強化法第15条の2第1項」及び「任期法第7条第1項」に規定され
 ております。

 

2.<特例2…専門的知識等を有する者等に対する特例>
1)平成27年4月1日施行で、労働契約法第18条の特例として、「専門的知識等を有する有期雇
労働者等に関する特別措置法」(平成26年法律第137号。「有期雇用特別措置法」と言う)
が交付され、労働契約法に基づく無期転換申込権発生までの期間に関する特例が適用される事となりました 。当該特例の適用を希望する事業主は、厚生労働省が別途定める申請書を都道府県労働局に提出して、その認定を受けることが必要です。

  
2)特例対象者         

①高度専門職に対する特例
5年を超える一定の期間内に完了する事が予定されている業務」に就く高度専門的知識等を
 有する有期雇用労働者(「高度専門職」と言う)・・・この者に対する特例適用の認定がなさ
 れた場合の労働契約期間は、
5年を超える一定の期間内に完了する事が予定されている特定有
 期業務
(プロジェクト)に就く期間で、当該プロジェクトに従事している期間は、無期転換申
 込権が発生しません
。但し、 当該特例が適用される場合であっても、10年経過すれば無期

 転換申込権が発生します。又、当該特例適用期間中に、次の事情が発生した場合には特例が
 適用されず、労働契約法第18条の原則通り
5年経過後に無期転換申込権が発生します。

 イ)特定有期業務(プロジェクト)に従事しなくなった場合

 ロ)年収が1,075万円未満となった場合
 ハ)特例適用の認定が取り消された場合

 
 ※専門的知識等を有する有期雇用労働者とは、労基法第14条1項1号で厚生労働大臣が定め
  る基準に該当する労働者である事を要し、1年間当たりの賃金額が1,075万円以上である事、
 

  博士の学位を有する者や各種有資格者に関する高度専門職の範囲が明確に定められており
  ます。

 ※「5年を超える一定の期間内に完了する事が予定されている業務」に就く高度専門的知識等
  を有する有期雇用労働者には、従事する特定有期業務(プロジェクト)が完了するまでの継
  続雇用が確保されれば、雇用目的は達成されるので、それ以上の過大な無期転換申込権の
  行使までは不要とされました。

 

 

②60歳以上の継続雇用者に対する特例
 60歳以上定年後に有期契約で継続雇用される高齢者(「継続雇用の高齢者」と言う) ・・・
 この者に対する特例適用の認定がなされた場合、定年後引き続き雇用されている期間を労働
 契約期間とし、その間は
無期転換とはなりません

 

60歳以上の定年後に有期契約で継続雇用される高齢者の場合も、定年後の再雇用であり、過
 大な無期転換申込権を与える必要性が無いために、当該特例が設けられました。

 

3)有期雇用特別措置法に関する申請の流れ

 

①無期転換ルール特例の適用を希望する事業主は、特例対象の労働者に関して、能力が有効に
 発揮されるような雇用管理に関する措置について、厚生労働省が定める第一種計画認定・変
 更申請書(
高度専門職の場合)ないし第二種計画認定・変更申請書(継続雇用の高齢者の場合)
 を作成します

②事業主は、作成した申請書(計画書)を、本社・本店を管轄する都道府県労働局に提出します

 
③都道府県労働局は、事業主から申請された計画が適正であれば、認定を行います   

④認定を受けた事業主に雇用される特例の対象労働者(高度専門職と継続雇用の高齢者)につい
 て、労働契約法第18条に定める有期労働契約の無期労働契約への転換を除外する特例が適用
 されます。尚、有期労働契約の締結・更新時に
労働条件通知書に、無期転換ルールに関する
 特例が適用されていることを明示して、対象労働者に当該事実を認識させる必要があります

 

⑤認定が取り消された場合、又は実態的に認定の有効要件を欠く状態になった場合には、特例
 の適用は受けられず、労働契約法第18条に規定される本来の有期労働契約から無期労働契約
 への転換規定が適用されます

 

5.有期労働契約の不合理な打切等の禁止

1)社会通念上相当と認められない有期労働契約の打切り禁止(第19条)

 原則として有期労働契約は、使用者が更新を拒否した場合には、契約期間の満了により雇用

が終了します。これを「雇止め」と言います。雇止めについては、労働者保護の観点から、過

去の最高裁の判例により一定の場合にこれを無効とする判例上のルール(雇止め法理)が確立

しております。今回の労働契約法の改正においては、雇止め法理の内容や適用範囲を変更する

ことなく、有期労働契約への適用を意図して、労働契約法に条文化されました。
 

(対象となる有期労働契約)労働契約法第16条の解雇権濫用の法理が類推適用されます  

①過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視
 できると認められるもの

*最高裁第一小法廷昭和49年7月22日判決(東芝柳町工場事件)の要件を規定  
          
②労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるものと
 期待する事について合理的な理由があると認められるもの
*最高裁第一小法廷昭和61年12月4日判決(日立メディコ事件)の要件を規定   
          
(要件と効果)        

 上記①、②の何れかに該当する場合に、使用者が雇止めをする事が、「客観的に合理的な理

由を欠き、社会通念上相当であると認められない時」は、雇止めが認められず、従前と同一の

労働条件で、有期労働契約が更新されます。即ち、労働契約法第16条の「解雇権濫用の法理」

が類推適用される事となります。

          
(必要な手続き)        

 当該ルールが適用されるには、労働者からの有期労働契約の更新の申し込みが必要となりま

す(契約期間中のみならず、契約期間満了後でも遅滞なく申込が為されれば、当該ルールが適

されます)。当該申し込みは使用者からの雇止めの意思表示に対して、文書に拠らなくとも、

何らかの拒否の意思表示が為される事をもって足るとされます。但し、後日の裁判等において

具体的な証拠を提示する必要がある場合を考えれば、文書等の具体的な証拠資料に拠る事が望

ましいと言えます。

          
2)有期契約労働者に対する不合理な労働条件の禁止(第20条) 

 同一の使用者との労働契約で、有期労働契約者と無期労働契約者間で、有期契約労働者に対

して期間の定めがある事により不合理に労働条件を相違させる事は禁止されております。但し、

当該相違が期間の定めの有無によるものではないと認定された場合には、この限りではありま

せん。

        
(対象となる労働条件)       
 賃金や労働時間等の狭義の労働条件だけではなく、一切の労働条件が対象とされます  
(判断の方法)        

 労働条件の相違が不合理と認められるかどうかは、次の要件を考慮して、個々の労働条件ご

とに判断されます

①職務内容(業務内容及び当該業務に伴う責任の程度)     
②当該職務内容及び配置の変更の範囲      
③その他の事情        
          
(効果)         
①この規定は、民事的効力のある規定で、法20条により不合理とされた労働条件の定めは無効
となり、民法415条に基ずく債務不履行による損害賠償責任か、民法709条に基ずく不法行為
による損害賠償責任が問われる可能性があります。当該不法行為責任とは、「故意または過失
によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠
償する責任を負う」と言うものです
②この規定により無効とされた労働条件については、無期契約労働者と同じ労働条件が認めら
れる可能性があると言われております

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