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年金に加入するメリットはあるの?

年金に加入するメリットはあるの?

はじめに

 母校社労士会 司会担当

 巷ではよく、「年金保険料を納めても、将来年金をもらえる保証は何もないから、保険料は払うほど無駄だ」とか、「例え年金が受給できても、これから本格的になる少子高齢化のしわ寄せを受けて、年金支給額はどんどん目減りする。それよりは自分で貯金しておくか、うまい運用方法を探した方が良い」等の意見が誠しなやかに交わされております。本当にそうでしょうか? もしそうであったとしても、将来に対する何の備えも無しに老後を迎えた時に、本当に安定した老後を送ることが出来るんでしょうか?

 はっきり言って遠い将来のことは、何が起きるか、どうなるかは誰にも解りません。例えば、平成15年度までは所得税法の被扶養配偶者には、配偶者控除38万円と配偶者特別控除38万円の合計76万円が納税者の給与所得金額から控除されていました(現在は被扶養者の年間収入103万円以下の場合の配偶者控除38万円と、被扶養者の収入に応じて38万円を上限とする配偶者特別控除の何れかのみとなった)が、政府は将来の国の財政状況に応じてこのような配偶者に対する優遇策を見直すことも、当然視野に入れていると思います。更に、国民年金の第3号被保険者には、保険料を納付していないにもかかわらず老齢基礎年金が支給されており、第1号被保険者に比較して不公平であり、当該制度を改正すべきとの意見が多く寄せられております。
 即ち、第1号被保険者の被扶養配偶者は、第1号被保険者として国民年金保険料を納付しなければ老齢基礎年金が支給されないのに対して、第2号被保険者の被扶養配偶者は第3号被保険者として保険料を納付していなくとも老齢基礎年金が支給される点です。この第3号被保険者の保険料は、第2号被保険者たる夫が支払っているという意見もありますが、厚生年金の被用者年金制度全体で賄っているというのが正解です。第2号被保険者の保険料は独身であっても既婚者であっても同じだからです。

 但し、過去及び現在を正確に把握できれば、自分たちが生きている間の将来の姿を予測することはある程度可能と思われます。少なくとも、明確な根拠もない巷の噂に付和雷同して、何の備えも無く惨めな老後を迎えるようなことがあってはならないと思います。

 まず最初に、日本の年金制度の1階部分を構成し、平成28年現在日本在住の6,712万人が加入している国民年金に加入することのメリットを検証してみたいと思います。次いで、2階部
を構成し、4,129万人が加入している厚生年金等について検証してみたいと思います。因みに、厚生年金等の加入者は自動的に国民年金の加入者となり、1階部分たる国民年金の各種給付に2階部分たる厚生年金等の各種給付が上乗せ給付されます。それ故、現在の日本の基本的な年金制度は2階建ての年金制度と言われています。それぞれの年金制度において、納付済み(又は納付見込み)の保険料額と受給見込み額を比較すれば、メリットの大きさははっきりします。しかる後に、年金以外に頼れる老後の資金の確保の方法及び年金と組み合わせてうまい財産の運用の方法等を検討しても遅くは無いように思います。

 現在の国民年金満額受給額(20歳から60歳まで40年間加入して保険料を全額納付した場合の受給額)は、平成11年の804,200円をピークに、来るべき少子高齢化時代の年金財政の安定化のために緩やかにではありますが、支給額を減らしてゆく方向にあります。因みに平成29年の国民年金満額受給額は、779,300円となっております。従いまして、当該年金の目減りを補い或は、老後資金を少しでも増やしたいと思われる方は、現役時代に極力確定拠出年金や確定給付企業年金のような企業年金に加入すると共に、更に余裕があれば民間の保険会社の個人年金に加入する等の自衛策を講ずる事が必要となります。即ち、これからは以前にもまして、自助努力が必要とされる時代になるという事です。この点につきましては後日論点を改めて論じてみたいと思います。

日本の公的年金制度の概要

1)日本の年金制度の遠隔

①昭和17年6月、厚生年金制度の前身たる「労働者年金保険法」が導入されました。民間の70歳
を超えた現業男子労働者が対象。当初は報酬比例のみの制度だったが、昭和29年の改正で年金
額の格差是正を目的として「定額部分」が導入されました。
②昭和19年10月、女子労働者、事務職従事者も対象として、「厚生年金保険法」が施行されまし
た。
 

③昭和34年(’59)4月、国民年金法が制定・公布されました。

④昭和34年(’59)11月、無拠出型の福祉年金(老齢、障害、母子、準母子)として70歳を超えた
者に支給を開始しました。

 
⑤昭和36年(’61)4月、拠出型の年金支給が開始されました。これにより国民皆年金が実現。実
質的な意味での国民年金法の導入はこの時からと言えます。同時に通算年金通則法の制定によ
複数の年金制度の加入期間が通算される通算年金制度が実施されました。例えば国民年金と
厚生年金の加入期間合計が25年以上あり、更に1年以上の厚生年金被保険者期間があれば年金
が支給される事となりました。

⑥昭和61年(’86)4月、新法の施行により国民年金は全国民共通の基礎年金の支給を開始。施行
日前を旧法と呼びます。
⑦平成9年(’97年)、1人1番号の基礎年金番号制が導入されました。

 

 

      

2)国民年金と厚生年金等との関係

 国民年金は老齢、障害、死亡について全国民(第1号~第3号被保険者)に共通の基礎年金の支
を行います。厚生年金保険、共済組合等(法律によって組織された共済組合、国家公務員共済
組合連合会、全国市町村職員共済組合連合会、地方公務員共済組合連合会又は日本私立学校振
興・共済事業団)は基礎年金の上乗せ給付として、厚生年金、共済年金の支
給を行ないます。

 
国民年金を一階、厚生年金・共済年金等を二階部分と看做して、二階建ての年金制度といわれ 

ております。 但し、下記記載の通り、厚生年金と共済年金には、被保険者が希望すれば更に三
階建ての年金制度へ加入できます。第一号被保険者にとって唯一三階建て部分らしきものとして
老齢基礎年金への上乗せ給付の制度である、付加年金への加入の道があります。
 以下、主として、老齢年金制度について説明いたします。障害年金・遺族年金については、
別途ご説明いたします。
 

(年金加入者数内訳)
                       (平成28年3月末現在)     (単位:万人) 


(三階)

 
(二階)

 

 

(一階)

 

付加年金(85)

 

厚年基金(254)

確定拠出企業型(548)

確定給付企業型(795)

職域加算
(443)

国年基金
(43)

確定個人(26) 

厚生年金保険(3,686)

共済年金(443)※

国民年金基礎年金(6,712)

1号被保険者
自営業者等

(1,668)-25%

 

2号被保険者
サラリーマン、OL、公務員

(4,129)-61% 

3号被保険者
第2号の配偶者 
 (915)-14%

 

       
 

     ※共済年金内訳:国家公務員共済-107、地方公務員共済-284、私学共済-52  

 

3)適格退職年金制度の終了

 平成13年10月より確定拠出年金法が、同14年3月より確定給付企業年金法が施行されまし

 

 た。更に適格退職年金制度はその役目を終えて、平成24年3月末に消滅しました。

 

4)  新たな厚生年金基金の設立が出来なくなりました

 厚生年金基金は、長きに亘り、我が国企業年金の中核を担ってきましたが、平成26年4月1日
 施行の「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する
 法律」= 厚生年金基金制度の廃止法により、新たな厚生年金基金の設立は出来なくなりました。
 ①改正法施行日の平成26年4月1日以後は、新たな厚生年金基金の設立を認めない

 ②既に存在する厚生年金基金を、存続厚生年金基金として他の企業年金制度への移行を促進
  する、特例的な解散制度等を導入。

 ③厚生年金保険法から「厚生年金基金及び企業年金連合会」の規定を削除すると共に、経過措
  置として「存続厚生年金基金」「存続連合会」に係る規定が整備され、他の企業年金制度への
  移行が促進され、特例的な解散制度の導入が行われる。

 ④政府は改正法の施行日から起算して10年を経過する日まで、存続厚生年金基金が解散し又
  は他の企業年金制度等に移行し、及び存続連合会が解散するよう検討し、速やかに必要な
  法制上の措置を講ずるものとする。
 ⑤施行日から5年後(平成31年4月)以降は、代行資産保全の観点から設定した基準を満た
  さない基金については、厚生労働大臣が第三者委員会の意見を聴いて、解散命令を発動で
  きる。

 

5)被用者年金制度が一元化されました

①被用者年金制度とは、厚生年金保険と各種共済年金を言い、年金制度の2階建て部分を構成し

ます。    
②平成27年10月1日施行で被用者年金制度が一元化され、共済年金は厚生年金に一元化されま
した。従来の国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、日本私立学校振興・共済事業団はそ
れぞれ厚生年金保険事業の実施機関として存続し、厚生年金保険法に規定された事務を行う事
となりました。保険料率は厚生年金の上限18.3%に揃えられます。 

③共済年金の3階(職域加算)部分は廃止されることになっています。廃止後共済組合の年金とし

て「退職等年金給付」が創設されることになっております。

④共済年金の追加費用削減の為、恩給期間に係る給付について本人負担の差に着目して(年金支

給額を)27%引下げ、一定の配慮(経過)措置が講じられます。尚、当該追加費用の削減は平成
25年8月1日から実施済みとなっております。

 

(被用者年金制度一元化後の制度)

区分

従来の制度

一元化後被保険者名

年金事務実施機関

厚生年金

1厚生年金被保険者

  厚生労働大臣 (日本年金機構)

国家公務員共済年金

2厚生年金被保険者

国家公務員共済組合及び同連合会

地方公務員共済年金

3厚生年金被保険者

地方公務員共済組合及び同連合会

私立学校教職員共済年金

4厚生年金被保険者

日本私立学校振興・共済事業団

 

         
 

Ⅰ.国民年金に加入するメリット

                  1.国民年金保険料と受給額の推移

改正年

保険料年額

(/年額)

満額年金額

(/年額)

満額年金額

改正年

保険料年額

(/年額)

満額年金額

(/年額)

満額年金額

保険料年額

保険料年額

昭和36

1,200

24,000

20.0

平成4

116,400

725,300

6.2

41

1,800

60,000

33.3

5

126,000

737,300

5.9

42

2,400

60,000

25.0

6

133,200

747,300

5.6

44

3,000

96,000

32.0

6

133,200

780,000

5.9

45

5,400

96,000

17.8

7

140,400

785,500

5.6

47

6,600

96,000

14.5

8

147,600

785,500

5.3

48

6,600

240,000

36.4

9

153,600

785,500

5.1

49

10,800

240,000

22.2

10

159,600

799,500

5.0

50

13,200

240,000

18.2

11

159,600

804,200

5.0

51

16,800

390,000

23.2

15

162,960

797,000

4.9

52

26,400

390,000

14.8

16

162,960

794,500

4.9

53

32,760

390,000

11.9

17

162,960

794,500

4.9

54

39,600

390,000

9.8

18

166,320

792,100

4.8

55

45,240

504,000

11.1

19

169,200

792,100

4.7

56

54,000

504,000

9.3

20

172,920

792,100

4.9

57

62,640

504,000

8.0

21

175,920

792,100

4.5

58

69,960

504,000

7.2

22

181,200

792,100

4.4

59

74,640

504,000

6.8

23

180,240

788,900

4.4

60

80,880

504,000

6.2

24

179,760

786,500

4.4

61

85,200

622,800

7.3

25

180,480

786,500

4.4

62

88,800

626,500

7.1

26

183,000

772,800

4.2

63

92,400

627,200

6.8

27

187,080

780,100

4.2

平成1

96,000

666,000

6.9

28

195,120

780,100 

 4.0

2

100,800

681,300

6.8

29

197.880

779,300

3.9

3

108,000

702,000

6.5

 

 

 

 

(注)「満額年金額/保険料年額」とは、各年度の納付保険料額に対する同一年度の年金受給

比率を表しており、この倍率が高い年度は納付保険料額との比較で、年金受給額が多ったこと

を表しております。昭和48年にはこの倍率が36.4倍と、年金制度の歴史上最高てお

すが、政府が北欧型の高福祉年金制度の創設を目指して年金支給額をた初年度であった為、

高くなっております。最近4倍台で推移しております。

 

2.国民年金に加入するメリットは如何程か?

まず最初に、国民年金だけに加入する方老齢基礎年金受給額のメリットを試算してみ
たいと思います。

 

①年金受給額…H27年受給額で20年間(H46年まで)受給と仮定

 

    780,100/年 20年 = 15.6百万円

   

②納付保険料額…昭和48年から40年間(H26年まで)納付したとした場合

 

    4.4百万円

 

③保険料納付額と年金受給額の倍率(金利を考慮しない場合)

 

    15.6百万円 ÷ 4.4百万円 ≒ 3.5

 

金利を加味した場合の納付額と受給額の倍率
上記の保険料納付期間40年間の平均金利が仮に3%であったとすれば、同金利による納付保険料の複利計算額は、納付保険料額の約3.3倍となります。但し、納付保険料は(昭和48年の6,600円/年から平成26年の183,000円/年まで)40年間に亘り徐々に積み立てられて、総額約4.4百万円になります。従って、この金利の影響を受ける納付保険料の平均残高は最大に見積もっても概ね半額の2.2百万円と計算されます。その結果、上記倍率は次の通りとなります。

   15.6百万円 ÷ 7.3百万円(2.2百万円Ⅹ3.3) ≒ 2.1倍

金利を加味してもこれだけの比率となっておりますので、国民年金に加入して保険料を納付することには大きなメリットがあると言えます。

 但し、(老齢)国民年金受給額は満額でも年間80万円に満たない(平成29年実績見込では779,300円)ため、老後国民年金だけで生計を維持するのは難しいと言えます。従って将来的には、第1号被保険者に対しても厚生年金制度同様の年金が支給され得る、何らかの対策が必要となると思われます。

Ⅱ.厚生年金に加入するメリット

 平均的なレベルの会社に定年まで概ね40年間勤務し続け、厚生年金に加入した場合には、国民年金だけに加入している人に比較して約3倍の年金受給額となります。もちろん、各会社の給与水準や、現役時代のポジションに応じた処遇によりその年金支給額は大きく異なります。厚生年金の場合には、本人と会社が保険料を折半して納付します。更に国民年金の老齢基礎年金も支給されますので、概ね3倍と言えます。

     1厚生年金保険料率の推移 (保険料率:%)

保険料改定時期

男性

女性

保険料改定時期

男女共通

昭和176

6.4

平成611

16.5

昭和1910

11.0

11.0

平成810

17.35

昭和229

9.4

6.8

平成154

13.58

昭和238

3.0

3.0

平成1610

13.934

昭和295

3.0

3.0

平成179

14.288

昭和355

3.5

3.0

平成189

14.642

昭和405

5.5

3.9

平成199

14.996

昭和4411

6.2

4.6

平成209

15.350

昭和484

7.6

5.8

平成219

15.704

昭和518

9.1

7.3

平成229

16.058

昭和5510

10.6

8.9

平成239

16.412

昭和6010

12.4

11.3

平成249

16.766

平成21

14.3

13.8

平成259

17.120

平成31

14.5

14.15

平成269

17.474

平成41

14.5

14.3

平成279

17.828

平成51

14.5

14.45

平成289

18.182

平成61

14.5

14.5

平成299月~

18.3で固定

()上記の厚生年金保険料率は、例えば平成279月の改訂値は17.828%となっています
  が、各月の厚生年金保険料額は被保険者たる労働者の標準報酬月額及び標準賞与額に
  当該料率を乗じて計算されます。更にその1/2ずつを労働者と会社が折半して負担しま
  す。平成299月以降は、18.3%で固定されます。
 

     2.標準報酬額と厚生年金保険料支払実績 (単位:千円)

年度

標準

報酬額

厚生年金保険料額

年度

標準

報酬額

厚生年金保険料額

総額

本人分

総額

本人分

昭和47

700

43.4

21.7

平成6

5,460

791.2

395.6

48

980

74.4

37.2

7

5,820

960.4

480.2

49

1,020

77.6

38.8

8

6,000

1,015.6

507.8

50

1,212

92.1

46.0

9

6,180

1,072.2

536.1

51

1,424

123.4

61.7

10

6,360

1,103.4

551.7

52

1,512

137.6

68.8

11

6,540

1,134.6

567.3

53

1,656

150.6

75.3

12

6,720

1,166.0

583.0

54

1,960

178.4

89.2

13

6,900

1,197.2

598.6

55

2,440

241.8

120.9

14

7,080

1,228.4

614.2

56

2,520

267.2

133.6

15

9,840

1,336.3

668.1

57

2,520

267.2

133.6

16

10,080

1,386.7

693.4

58

2,640

267.2

133.6

17

10,080

1,424.5

712.2

59

2,760

280.0

140.0

18

10,080

1,460.1

730.1

60

2,880

331.2

165.6

19

10,290

1,527.3

763.7

61

3,000

372.0

186.0

20

10,440

1,586.3

793.1

62

3,240

401.8

200.9

21

9,480

1,472.5

736.2

63

3,480

431.6

215.8

22

6,600

1,049.2

524.6

平成1

3,960

510.4

255.2

23

5,950

967.0

483.5

2

4,640

668.4

334.2

24

5,920

983.1

491.5

3

4,920

713.4

356.7

25

5,890

999.0

499.5

4

5,100

739.6

369.8

26/12月迄

4,990

862.6

431.3

5

5,280

765.6

382.8

43年間計

216,544

31,858

15,929

 (注)上記の標準報酬(年)額と厚生年金保険料(年)額は、下記3.に記載する要件に該当する男性の実際の数字を利用させていただいております。
 

3.厚生年金に加入する優位性の検討 
1)優位性検討のための事例
 厚生年金に加入する優位性の検討のために、
下記のような要件に該当する男性の実際の数字を利用させていただいております。

(個人情報等)
・昭和24年10月20日生の男性で、サラリーマン生活42年9か月を経て平成26年12月に
65歳で定年退職。
昭和34年生の加給年金額に該当する奥様あり。夫である当該被保険者は昭和18年4月2日以後生のために、特別加算が年額165,600円加算されて、配偶者加給年金額は奥様が65歳になるまでの10年間、年額390,100円支給されます。
・男の子が1人おりますが、すでに成人して別居しているために子供の加給年金額は該当しません。
・20歳から22歳までの学生の間の国民年金第1号被保険者としての保険料は納付済の為国民年金の老齢基礎年金は65歳から満額受給可能です。平成28年度支給額であれば780,100円となります。

※老齢厚生年金支給額は、下記の(付記)記載の様に算定されます。尚、当該金額は上記被保険者が日本年金機構から「年金額決定通知書」を受領済みであり、両者はほぼ一致しております。 

2)年金受給見込額
 平成27年度の受給額を、20年間(65歳~84歳)受給可能とします。
 ①老齢基礎年金満額受給額 :    780,100円/年 X 20年間 = 15,602千円
 ②老齢厚生年金受給額付記):  1,628,700円/年 Ⅹ 20年間 = 32,574千円
   ③同配偶者加給年金額   :     390,100円/年 x  10年間 = 3,901千円                                              受給年額2,799千円 20年間合計 52,077千円

3)保険料納付実績額
 上記2.「標準報酬額と厚生年金保険料支払実績」記載の通りとなっております。

 ①43年間累計の本人負担額(総額の1/2):   15,929千円
 ②同上期間の負担総額(会社分+本人分)   : 31,858千円 

4)厚生年金に加入することのメリットは如何程か?
 ①本人負担の厚生年金保険料額:52,077千円 ÷ 15,929千円 ≒ 3.3倍
 ②総額の厚生年金保険料額   : 52,077千円 ÷ 31,858千円 ≒ 1.6倍

 本人負担の厚生年金保険料額で計算すれば、国民年金老齢基礎年金にかなり近いメリット倍率の3.3倍となりますが、会社負担額も含めた総額でカウントすれば約半分の1.6倍となり、あまりメリットがあるとは言えません。この様に厚生年金受給のメリット倍率が国民年金に比較して低くなっていることの要因の1つには、厚生年金の第2号被保険者の被扶養配偶者たる第3号被保険者は、要件を満たせば65歳以後老齢基礎年金を受給出来ますが、この分の保険料を第3号被保険者は負担せず、厚生年金保険制度全体で国民年金への「基礎年金拠出金」として負担していることがあげられます。因みに、上記平成27年の国民年金の満額受給額は780千円、同年の厚生年金受給額は国民年金の満額受給額を含めて2,799千円となっており、国民年金満額受給額の3.6倍となっております。
 厚生年金保険料の納付額が会社負担分と本人負担分の総額で国民年金保険料納付額の4.6倍、本人負担額だけでも2.3倍となっておりますから、厚生年金の受給額が多いのは当たり前と言えます。但し、厚生年金保険料納付額の総額(会社負担分+本人負担分)が国民年金保険料納付額の4.6倍となっているにも係らず、厚生年金受給額の国民年金受給額に対する倍率は3.6倍にとどまっております。この1倍の目減りの原因については、下記に、両年金のメリット倍率の差異の原因として詳述しております

 会社の負担する厚生年金保険料額は、健康保険料や雇用保険料同様、従業員を長期安定的に確保するためには必要欠くべからざる福利厚生費的な費用と言えます。最近では人手不足の兆候も見え始めております。このところ世上を騒がしている一部のブラック企業を引き合いに出すまでも無く、従業員を健康保険にも厚生年金にも加入させないような企業にまともな人材が集まるわけがありません。優秀な人材を確保して、長期的な企業の発展を願う経営者であれば猶更、この様な基礎的な社会保障制度の完備は必要不可欠と言えます。
付記)老齢厚生年金受給額の計算 (金額:千円)

年度

報酬額

再評価率

再評価額

年度

報酬額

再評価率

再評価額

昭和47

700

3.810

2,667

7

5,820

1.006

5,855

48

980

3.810

3,734

8

6,000

0.994

5,964

49

1,020

2.796

2,852

9

6,180

0.981

6,063

50

1,212

2.380

2,885

10

6,360

0.969

6,163

51

1,424

2.380

3,389

11

6,540

0.968

6,331

52

1,512

1.968

2,976

12

6,720

0.968

6,505

53

1,656

1.809

2,996

13

6,900

0.967

6,672

54

1,960

1.715

3,361

14

7,080

0.973

6,889

55

2,440

1.715

4,185

①小計

116,904

1.223

142,950

56

2,520

1.544

3,891

15

9,840

0.976

9,604

57

2,520

1.470

3,704

16

10,080

0.977

9,848

58

2,640

1.419

3,746

17

10,080

0.979

9,868

59

2,760

1.364

3,765

18

10,080

0.979

9,868

60

2,880

1.364

3,928

19

10,290

0.976

10,043

61

3,000

1.291

3,873

20

10,440

0.960

10,022

62

3,240

1.257

4,073

21

9,480

0.972

9,215

63

3,480

1.227

4,270

22

6,600

0.977

6,448

平成1

3,960

1.227

4,859

23

5,950

0.980

5,831

2

4,640

1.153

5,350

24

5,920

0.981

5,808

3

4,920

1.100

5,412

25

5,890

0.977

5,755

4

5,100

1.070

5,457

26.12

4,990

0.951

4,745

5

5,290

1.047

5,528

②小計

99,640

0.974

97,055

6

5,460

1.027

5,607

③合計

216,544

1.108

240,005

入社以来31年間相当の老齢厚生年金支給額(昭和47年4月~平成15年3月、372月)
 ・同期間の平均標準報酬月額:384,270円=142,948千円÷372月
 ・同期間の老齢厚生年金支給額:1,072,100円=384,270円X7.5/1,000X372月

平成15年4月以後12年間の老齢厚生年金額(平成26年12月までの141月)
 ・同期間の平均標準報酬額 :688,300円=97,055千円÷141月
 ・同期間の老齢厚生年金支給額: 559,900円=688,300円X5.769/1,000X141月

老齢厚生年金合計額(従前額の保障+物価スライド特例措置による)
1,628,700円=1,632,000円(①1,072,100円+②559,900円)X0.998(1.031X0.968) 

(参考)
日本年金機構の発表によりますと、大学卒の人のサラリーマン生活全体を通した再評価後の平均的な標準報酬年額は、概ね40歳頃の標準報酬年額に相当するそうです。因みに上記の方の40歳頃は平成1年に相当し、上記(付記)記載の通り同金額は4,859千円となっております。この方の42年9か月間の再評価後の報酬総額を同期間で割ってみますと年額5,614千円(240,004千円÷513か月Ⅹ12)となります。これは上記の平成6年の再評価後の報酬年額に
相当します。日本年金機構の発表とは5年程後にずれております。被保険者の属する年代や所属する会社の給与体系、更には会社の業績の変動により、この様な相違が生じます。

国民年金と厚生年金のメリット倍率
の差異はどうして生じているの?

1)国民年金制度と厚生年金制度の財源の相違
 既述の通り、国民年金のメリット倍率(生涯に亘って受給する老齢年金総額を納付する保険料総額で割った比率)は3.5倍とかなり有利に計算されるのに対して、厚生年金の方は1.6倍(被保険者分と事業主分の総額で計算)と半分以下となっております。主としてこの相違は、各々の年金制度を維持している財源の相違から生じております。

(国民年金と厚生年金の財源の相違)

 

国民年金制度の財源

厚生年金(被用者年金)制度の財源

1号被保険者納付の保険料

被保険者納付(含事業主分)保険料

被用者年金基礎年金拠出金

国民年金事業積立金の運用収入

厚生年金事業積立金の運用収入

国庫負担

①被保険者納付の保険料
 これは文字通り各制度の被保険者が納付した保険料です。国民年金は第1号被保険者納付保険料だけですが、厚生年金は被保険者と事業主が1/2ずつ折半して負担しており、被保険者1人当たりの保険料(含む事業主分)は国民年金保険料の4~5倍程度になります。このことが厚生年金加入者の年金額と、国民年金加入者の年金受給額に大きな格差を生んでいる主因となっております。例えば、前述の事例で取り上げた男性の厚生年金受給額(国民年金の老齢基礎年金を含む)は、国民年金の老齢基礎年金だけを受給する人の3.6倍になっております。但し、下記に述べる事由により、納付保険料の倍率(4~5倍)に比較して年金受給額の倍率(上記事例では3.6倍)は、若干目減りしております。

②被用者年金基礎年金拠出金
 厚生年金(被用者年金)制度全体から国民年金事業に対し、第2号被保険者と第3号被保険者に対する国民年金法上の各種基礎年金給付の財源として、当該拠出金が拠出されております。第3号被保険者とは第2号被保険者の被扶養配偶者で、国民年金保険料を納付しなくとも25年以上(平成27年度の満額の老齢基礎年金…780,100円を受給するには40年間の加入期間が必要)の被保険者期間を充足すれば、65歳から老齢基礎年金が支給されます。この点も、厚生年金のメリット倍率が、国民年金のメリット倍率に比較して低くなる要因となっております。

③積立金の運用収入
 国民年金と厚生年金ともに、主として被保険者等から納付された保険料を財源とした積立金を運用した運用益が、各制度の財源に組み入れられます。最近は少子高齢化の影響だけではなくこの運用収入の減少(一部には運用利回りがマイナスとの報道もなされております)が、年金財政のひっ迫により一層拍車をかけております。

④国庫負担
 国民年金独自の制度であり、平成21年4月以後は国民年金制度の維持運営に必要とされる保険料の1/2を国庫が負担・支給しております(平成21年3月以前は1/3)。この事が国民年金のメリット倍率の高さの主因となっております。厚生年金の被保険者に対しても国民年金法上の各種給付が行われており、等しくその恩恵を受けております。但し、前述の実際例における厚生年金の給付額は国民年金給付額の3.6倍に達しているために、金額の小さな国民年金のメリット倍率を押し上げるほどには、厚生年金のメリット倍率を押し上げるには至っておりません。 

2)保険料の賦課方式の相違
国民年金の保険料は平成28年現在、毎月定額の16,260円(平成29年からは16,900円で固定)となっております。これに対して、厚生年金の保険料は、平均標準報酬(月)額に一定の保険料率を乗じて、被保険者と事業主が各々1/2ずつ折半して負担しております(平成28年現在の保険料率は17.828%、平成29年9月以降は18.3%で固定)。被保険者の在勤中の厚
生年金保険料の負担がかなり大きいと言えますが、老後に対する備えとしてある程度やむを得ない負担と言えます。この負担が大きければそれだけ将来受け取る年金額が増えるわけですから、老後に対する一種の貯金と言えます。事業主が負担する厚生年金の保険料も大きな負担となるわけですが、健康保険料や雇用保険料同様、特別優秀な人材でなくとも、普通の社員を安定的に確保して会社の長期的な発展を支えるための必要不可欠な福利厚生費的な支出と言えます。

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